オランダ商館長、丸山遊女を訪問中
丸山遊女の匂いや、遊郭の匂いなど、当時の出島オランダ商館長が嗅いだであろう約400年前の日本の匂いを散りばめた部屋。
[A] ゲイシャ・コスメ・カウンター
遊女が身につけていたであろう8つの化粧品を、江戸時代のベスト セラーお洒落本である都風俗化粧伝(1813)などを参考にして、なるべく当時の処方そのままに作りました。これらを駆使して、遊女になりきるのもひとつの作品の楽しみ方です。
[B] ゲイシャ・コスプレ・パフォーマンス
会期中の週末には、遊女の最高格・花魁が「魅惑の匂い」を纏い、実際にこの部屋で暮らします。(花魁に扮するのは在蘭邦人の有志コスプレ・ボランティア。)
[C] ヘッド・マウント・嗅覚ディスプレイ
嗅覚インターフェースを作りました。頭がすっぽりと箱の中に入り ます。暗闇の中で、出島オランダ商館長が日本で嗅いだであろう匂いの数々を嗅ぐことができます。箱の中の匂いも全て自作しました。
smell 1: 樟脳
「この木の匂いは特に、神社の周りでよく嗅ぐ。暑くジメジメした夏の日などは特に、私を涼ませてくれる。この木片から日本人が抽出する白い結晶は、竜脳と よく似た匂いがするが、竜脳よりはずっと安価である。そこで我ら東インド会社は、この商品を竜脳の代替商品として販売する戦略をとり、そのマーケティング は世界中で成功を収めている。日本人はこの商品で支払いをし、丁字や桂皮などのスパイスを買い入れる。」
〜出島オランダ商館長、樟脳の匂いについて語る〜
smell 2: 沈香
「茶屋の匂いそのものであるこの匂いは、私を避け難くそこに招き入れる。遊郭では常に絶やさずこの香を焚いている模様で、そのため遊郭一帯がこの匂いに覆われている。この香りは、私をリラックスさせ、興奮させもする。」
〜出島オランダ商館長、沈香の匂いについて語る〜
smell 3: お歯黒水
「遊女にはこの液体で歯を黒く染める習慣がある。この液体 があまりに酷い臭いを発するため、私が目を覚ます前にその儀式を終えるように気遣っているほどである。この液が何であるのか問うたところ、茶、麹、水飴、 鉄釘、そしてある種の木瘤を轢いた粉を混ぜて発酵させたものということであった。彼女が笑ったときなど口の端から黒い歯がのぞき、それがまた極めて目立つ ため、はからずもドラキュラを想起させる。」
〜出島オランダ商館長、お歯黒水の匂いについて語る〜