GEISHA

– 日本とオランダの歴史にインスパイアされた、ふたつの平行する嗅覚環境 –

インスタレーション、受託制作作品 (2009)

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月岡雪鼎(つきおかせってい)

このふたつの平行する嗅覚環境インスタレーションは、オランダが長崎出島に滞在していた17世紀の世界にビジターを誘います。ここにおける匂いは、歴史的事実を伝えるためではなく、想像とファンタジーの世界を膨らませるためにあります。

(1) 丸山遊女の部屋

丸山遊女の匂いや、遊郭の匂い。当時の出島オランダ商館長が嗅いだであろう約400年前の日本の匂いを散りばめた部屋。

[触ってください!] 自由に探索し、匂いを嗅ぎ回ってください。丸山遊女になったり、オランダ商人になったつもりで体験してください。畳の上に寝転がったり、白粉などで化粧をして遊女の匂いを体に纏い、当時のオランダ人にとってのそれらの匂いがどれだけエギゾチックなものだったかを想像してみてください。

(2) オランダ商人の部屋

この部屋には、丸山遊女が出島生活で嗅いだであろう、オランダの 匂いが展示されています。現代の私達にはあたりまえですが、当時は限られた日本人しか嗅げない特別な匂いの数々です。 コーヒー、煙草、食肉の匂いなど。

制作プロセスをもっと詳しく知りたい方はこちらへ:http://witch-lab.blogspot.com/search/label/%5BGEISHA%5D

 

ゲイシャ・コスメティックス

遊女たちはその仕事の道具として、あらゆる媚薬的な匂いを駆使しました。ここに並んだコスメティックスは、おもに17世紀の処方に基づき、遊女のつけていた化粧品を再現しています。その匂いがあなたの想像力を掻き立ててくれるでしょう。

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[1] 花の露 DEW OF FLOWER

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「遊女達はいばらの花の蒸留水である”花の露”という化粧水を好む。最高格の遊女が1640年頃から利用し始めて以来、中産階級などの庶民にも広がっていったようだ。購買力のない貧しい者たちは、都風俗化粧伝というお洒落本(1813年刊)を参考にしながら、やかんと湯のみで自作するほどである。」

〜オランダ出島商館長〜

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使用方法:

(1) 化粧水として:洗顔後に噴きかけると、保湿効果が高まります。

(2) 白粉押さえに:白粉の上から噴きかけると、肌の艶と輝きが増します。

原材料名:

薔薇水、丁字、白檀、竜脳

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(2) オランダ商人の部屋

丸山遊女、オランダ商人を訪問中

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この部屋には、丸山遊女が出島生活で嗅いだであろう、オランダの 匂いが展示されています。これらは現代の私達にはあたりまえですが、当時は限られた日本人しか嗅げない特別な匂いでした。

Smell 1: コーヒー

「出島オランダ商館長は毎朝好んでこれをお飲みになりま す。いささか焦げたような匂いがいたしますが、館長によると豆で作られたものとか。もしかしたら黒豆茶か麦茶に似たようなものかと思われましたので、ひと くちいただきましたところ、ひどく苦くはありましたが、なんとか喉を通すことができました。先日いらっしゃった通詞の方などは、あまりの苦さに粗相してし まわれたとか。」

 〜丸山遊女、コーヒーの匂いについて語る〜 

 

Smell 2: 煙草

「出島オランダ商館長は、事に及ばれた後やお食事の後など は必ず、何やら木の葉のようなものを燃やした管からこのような匂いのする煙を吸うのをお好みになります。この煙はまた、部屋中に行き渡ります。たいてい焚 き火のような匂いがいたしますが、時々甘い良い匂いがすることもあり、また苦々しく尖った匂いのする時もあります。」

 〜丸山遊女、タバコの匂いについて語る〜

 

Smell 3: 食肉

「特別な晩餐会の時などは必ず、食卓にこの匂いが漂いま す。このお料理がいったい何なのか、出島オランダ商館長にお聞きしましたところ、驚いたことに、出島の隅にある家畜小屋にいたものだとおっしゃるではない ですか。館長はご親切にわたくしにも勧められましたが、申し訳ないことにお断りしてしまいました。四ッ足の動物を食することは、仏様のお怒りに触れること になるかと思われましたので。」

 〜丸山遊女、食肉の匂いについて語る〜