白い闇
ヨコミゾマコト (建築家) x MAKI UEDA (嗅覚のアーティスト)のコラボレーション
パヴィリオン/空間インスタレーション (2013)
「白い闇、と聞いてそんなのあるのかな? と思ったけれど、体験してみたらそれはまさに白い闇---そうとしか表現しようのない、あまりにも不思議な空間だった。 壁にぽっかりと開いた丸い穴。その穴をくぐり抜けて薄暗い空洞の中に降り立つと、ふいに視覚は役に立たなくなる。何しろ、とりとめがなく、みどころのない白しか見えないのだ。」(体験者談)
東京赤坂ニューオータニ・ガーデンコートのオカムラ・ショールームの一角にあるOKAMURA Design Space Rでは、年に1度、新々建築家とアーティストが斬新なコラボレーションを行います。2013年は、「形によって空間と時間をデザインする建築家」ヨコミゾマコトと、「形がないもので空間と時間をデザインする嗅覚のアーティスト」MAKI UEDAとのコラボレーション。非日常的な建築的空間が創出されました。
にじり口を入ると、実際に霧がかっているような空間がそこに広がっている。薄明るい暗闇である。視覚は役に立たない。呼吸が落ち着くような爽やかな香りが広がっている。匂いを嗅ぎつつ、手探りしながら、じぶんの足音を聞きながらソロソロと歩いていく。 次第に、暗闇に目が慣れてくるのか、なんとなく奥の方が見えてくる。しかし、壁は相変わらず見えない。そのため、エンドレスの空間に感じられる。
手探りで壁を確認し、伝って歩くと、次第に香りも変化する。空間が広がるようなスペーシーな香り。そして、包まれるような懐かしい香りへと展開していく。
たとえば吹雪の中、あるいは濃霧の中で、方向感覚や遠近感を失う。その現象をホワイトアウトというが、それに似た体験を得られる空間である。
「白い闇」に向けて
ヨコミゾマコト
この展覧会では、私が憧憬する無限に広がる境界のない空間をつくってみたいと考えています。そもそも有限なこの地球上に、無限に広がる空間をつくり出すなど土台無理な話です。しかし、物理的には不可能でも、人の持つ感性と想像力に頼れば可能かもしれません。そこで、嗅覚のアーティスト MAKI UEDA さんに参加して頂くことにしました。形によって空間と時間をデザインする建築家と、形がないもので空間と時間をデザインする嗅覚のアーティストとのコラ ボレーションです。
想定されるのは、白いだけのまったく何もない空間です。しかしそこは、とても静かで豊かな空間です。嗅覚と聴覚が研ぎすまされます。 視覚は役に立たないからです。匂いは日常に溢れているものながら、 未解明の部分が多いようです。嗅覚は、視覚や聴覚に比べて、原始 的かつ直感的であり、記憶に直結しているとも言われています。その嗅覚に刺激を与えることで、人のもつ無限の感性と想像力を活性化させたいと考えています。
インスタレーションを楽しんでいただくために
MAKI UEDA
みずからを匂いに委ね、嗅覚を頼りに空間を歩いてみてください。匂いが空間をナビゲートしてくれます。普段は主に視覚が使われます が、この空間では嗅覚が主役です。
独りで入っている時は、目をつむり、手探りしてもよいでしょう。つまずくモノもありません。たとえば犬のように、四つん這いになって右に左にクンクンするのはどうでしょう。
この空間には、三つの匂いを使って、目には見えない「立体画」を描きました。あたかもRGB(赤緑青)の三原色がモニター上で鮮やか な映像を映し出すかのように。この空間は、匂いの色彩で満たされています。どことして同じ色は存在しません。
香り自体に意味はありません。そこに意味づけを与えるのは、みなさんの経験や体験です。香りはすべて、ニュートラル。主役は、みなさんの「嗅覚の可能性」です。
全体企画: OKAMURA Design Space R企画実行委員会
委員長: 川向 正人 (建築史家、建築評論家、東京理科大学教授)
企画委員: 芦原 太郎 (建築家)北川原 温 (建築家、東京芸術大学教授)内藤 廣 (建築家)中村 喜久男(岡村製作所 代表取締役会長)
実行委員: 岩下 博樹、萩原 圭一、鈴木 勇二、中村 留理、竹森 邦彦 (岡村製作所)
開催場所: オカムラ ガーデンコートショールーム内 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニ・ガーデンコート3F Tel: 03-5276-2001
主催: 株式会社岡村製作所 〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-27 国際新赤坂ビル東館10F Tel: 03-5561-4091
香料協力: 山本香料株式会社
制作過程: (ブログへのリンク)