オー・ド・パルファン パーフェクト・ジャパニーズ・ウーマン
- perfect Japanese woman になるための香水 -
パフューム・アート、インスタレーション (2008)
作品概要
このインスタレーションは「糠味噌」、「畳」、「味噌汁」、そして「石鹸」の4つの香水で構成されます。香水店のように、拭香紙にスプレーして匂いを嗅いだり、着用してください。スプレーした後20秒待って、アルコール分が蒸発してから匂いを嗅いでください。
それぞれの匂いは、日本の社会が期待する女性像を象徴しています。匂い自体は、作家の手によりそれぞれの 素材から抽出されました。
香水に付随する説明書
No. 1 糠味噌
- 密かに「糠味噌臭い女」に憧れる貴女に -
「糠味噌臭い」という表現が日本語にあります。所帯じみて垢抜けない女性に対する貶し言葉です。昔はどの家にも糠床がありました。毎日掻き回さなければならない手のかかるものなので、お母さんの手には糠床の酸っぱい臭いが常に染み付いていました。
しかしそれも徐々に時代遅れになりつつあります。糠漬けはスーパー で買うものとなり、漬け方の奥義を知る者が少なくなってしまった現代、世の男性はやはり心寂しくも思っているものです。
美味しい糠漬けを漬けれる女性こそ最 高にいい女、と思われる時代も間もなくでしょう。食卓にはさりげなくスーパーで買って来た糠漬けを出し、手にはササッとこのパルファンを。糠味噌臭こそ、永久の母性の匂いです。
(米の外皮である糠でまず糠床を作り、それをアルコール抽出しました。ザワークラウトにも似た乳酸系の発酵臭がします。)
No. 2 畳
- 「女」としてリフレッシュしたい貴女に -
「女房と畳は新しい方が良い」ということわざが日本語にあります。新しい畳が気持ちいいように、女房も新しい方が気分がいい。何でも新鮮な方がいいという 意味です。
畳はイグサ(藺草)という湿地に生える細長い草で編まれたものです。新しい畳みが気持ちいいのは、清潔だからというのもありますが、新しいものほ どイグサがいい匂いを発しているからでもあります。しかし残念なことにそれは月日が経つにつれてだんだんに薄れていきます。「女房」がそんなイグサの匂いに 例えられているのが、このことわざです。
そんな失礼な、「旦那」だって新しい方がいいじゃない、といった反論は、とりあえず横においておきましょう。女とし て、フレッシュで若々しい気持ちを思い出したいとき、このパルファンはあなたの強い味方です。どの世代の女性にもお使いいただけます。
(イグサを岡山県から取り寄せ、それをアルコール抽出しました。)
No. 3 味噌汁
- 台所の女を演出したい貴女に -
トントントンという軽快な包丁の音と、味噌汁のいい香りで目覚める幸せな朝 --- ライフ・スタイルの欧米化に伴い、このような光景も消えつつある昨今。
このパ ルファンはルーム・スプレーとしてもお使いいただけるため、そんな朝を手軽に演出することも可能です。家族をただ叩き起こすのではなく、幸福感の中でそっと起こしてあげる、そんな賢く優しい女性になりたい貴女のためのパルファンです。
また例えば旦那様にはナイショにしたい密かな冒険の後など、旦那様の鼻をカム フラージュするのに、このパルファンは貴女の強い見方です。シュッシュッと身に振りかけ、一日中台所にいたかのように演出しましょう。
(普段わたしたちが知覚する味噌汁の匂いは、味噌汁が蒸発したときの匂いです。なので味噌汁をフラスコの中で作り、匂いだけを蒸溜しました。)
No. 4 石鹸
- 純粋で清潔な女を演出したい貴女に -
朝シャンしてふわっとした香りを髪で奏でる、それは日本の女子高生の常識です。ですが、時間も余裕もないけど手軽に装いたい、そんなときもあります。このパルファンをひと振りすれば、あたかも今さっきシャワー・ルームから出て来たかのような香りを振り撒くことができます。
日本の男性は概して、純粋で清潔なイメー ジの女性を好むものです。貴女が小悪魔であればなお一層、このパルファンはその魅力を引き立たせてくれるでしょう。
(既製品の石鹸をチーズ下ろし器で下ろし、蒸溜しました。)
これまでの展示
Gallery Roodkapje, Rotterdam (PREMIER), 09.2008.
Dutch Design Week, Eindhoven, 17-25.10.2009.
World Technology Network Award, New York, 07.2009.
Artists Summit Kyoto, Japan, 12.2009.