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遊女たちはその仕事の道具として、あらゆる媚薬的な匂いを駆使しました。ここに並んだコスメティックスは、おもに17世紀の処方に基づき、遊女のつけていた化粧品を再現しています。その匂いがあなたの想像力を掻き立ててくれるでしょう。

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[1] 花の露 DEW OF FLOWER

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「遊女達はいばらの花の蒸留水である"花の露"という化粧水を好む。最高格の遊女が1640年頃から利用し始めて以来、中産階級などの庶民にも広がっていったようだ。購買力のない貧しい者たちは、都風俗化粧伝というお洒落本(1813年刊)を参考にしながら、やかんと湯のみで自作するほどである。」

〜オランダ出島商館長〜

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使用方法:

(1) 化粧水として:洗顔後に噴きかけると、保湿効果が高まります。

(2) 白粉押さえに:白粉の上から噴きかけると、肌の艶と輝きが増します。

原材料名:

薔薇水、丁字、白檀、竜脳

 

[2] 伽羅の油 OIL OF KYARA

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「"伽羅の油"と呼ばれるバター状のワックスは、最高級の香木である伽羅に因んで名付けられている。"伽羅"という言葉は遊郭では、何でも最高で豪奢なものの隠喩としても使われている。髪にも肌にも使われるワックスであるため、これを使用する人が側を通れば、匂いだけでそれとわかる。江戸や京にはこのワックスの専門店さえ少なからず存在するという。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

(1) 地肌に:クリームとしてお使い下さい。

(2) 頭髪に:ヘアー・ワックスとしてお使いください。

原材料名:

蝋、蜜蝋、胡麻油、松脂、甘松、丁字、白檀、茴香、桂皮、麝香、竜脳

 

[3] 美人香 SCENT OF BEAUTY

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「肌は白ければ白いほど遊女の価値は高くなる、と人々は考えているようである。そのため遊女達は美白のためにはありとあらゆる努力を惜しまないのである。"美人香"という粉には、美白に効果的とされている漢方系の生薬が配合されている。そのため遊女達はこの粉を、洗い粉として、あるいは乳液として、時にはパックとして、ありとあらゆる方法で活用しようとするのである。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

(1) 洗い粉として:この粉をよく肌に擦り込んだ後、米糠で洗い流してください。

(2) 乳液として:半匙を小皿に取り(擦り切り棒を用いて半匙を計る)、水10滴、胡麻油7滴を足し、よく混ぜます。すると乳化してローション様になるので、それを肌に擦り込みます。特に皺の間に擦り込んで地肌を均すと、白粉の伸びがよくなります。小皿は御使用後、次の方のためにティッシュで拭いて下さい。

(3) パックとして:粉と水を手の平の上でよく混ぜ、肌に伸ばします。半日経ったら洗い流します。

原材料名:

ぶんどう豆、葛粉、滑石、百止、附子、白檀、甘松、竜脳

 

[4] 白粉 OSHIROI POWDER

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「日本人は化粧をする際、赤・黒・白の3色しか使わない。唇と頬は赤、眉と歯は黒(彼らには歯を黒く染める習慣がある)、肌は白とされている。さて肌を白く見せるには、"白粉"と呼ばれる粉に水を足して塗料のようなものを作り、それで肌に塗るのである。さらにその上からまた同じ粉をまぶし、なんとも絹のような肌理を作り上げるから驚きである。十分すぎるほど白く見えるまで、この行為を重ねて繰り返すのである。私の遊女などは時に幽霊のように白く見える。しかし幽霊と決定的に違うのは、官能的なその匂いなのである。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

(1) ファンデーションとして:半匙を小皿に取り(擦り切り棒を用いて半匙を計る)、水10滴を足し、よく混ぜ、肌に伸ばします。小皿は御使用後、次の方のためにティッシュで拭いて下さい。

(2) 絹のような肌理を:ファンデーションの上からパフでたたいてください。

原材料名:

滑石、ピグメント(白、シルク・ホワイト)、ステアリン酸マグネシウム、ホホバ油、竜脳、麝香

 

[5] 五倍子粉で腋臭を退治する法 FUSHINOKO DEODORANT

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「我々に比べると日本人にはそれほど顕著な腋臭は無いのであるが、彼らは非常にそれを気にするようである。彼らの清潔感は時に神経質である。腋臭を消すために、私の遊女はよくこの粉を用いる。彼女は私もこれを用いるようにと、暗に上手に勧めるのである。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

デオドラントとして:1匙の五倍子粉を小皿に取り、水を足し、よく混ぜ、脇の下に伸ばしてください。小皿は御使用後、次の方のためにティッシュで拭いて下さい。

原材料名:

五倍子粉 (アブラムシの寄生によりウルシ科ヌルデの木に生じた木瘤を轢いた粉。タンニンを多く含む。アブラムシの死骸も含む。お歯黒にも使われる。)


[6] 丁字油 SEDUCTIVE PERFUME

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「17世紀の半ば、精油の薬用価値を予見した江戸幕府の命により、蘭学者たちは我々から蒸溜法や油浸法等を学んだ。"丁字油"は後にヒット商品となった。歯痛や擦り傷の薬としてだけでなく、媚薬としても用いられる。丁字は我々の最も重要な貿易品目のひとつであり、日本人は丁字を輸入する際の代金を樟脳で支払う。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

(1) 媚薬香水として:肌に直接噴射して下さい。

(2) 薬用油として:歯痛や擦り傷の際、患部に直接塗って下さい。

原材料名:

丁字、胡麻油

 

[7] 体身香 PERFUME TO INGEST

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「中国の伝説的な姫君である楊貴妃は、中国四大美女のひとりに数えられる。楊貴妃は香しい体臭を持っていたと言われ、長年に渡り玄宗皇帝に溺愛された。楊貴妃は"体身香"なる、動物の糞のような丸薬を飲用していたと言われる。私の遊女もそれにあやかり、楊貴妃の愛用した"体身香"を飲用しているが、その効果のほどに関してはノー・コメントである。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

1日1個飲用してください。(自己責任の上で)

原材料名:

丁字、霍香、零陵香、青木香、甘松香、白芷、当帰、桂心、檳榔子、麝香、梅肉、蜂蜜

 

[8] 匂い袋 PERFUME FOR KIMONO

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「日本人は香水をプンプン匂わせるより、衣裳からほのかな匂いを立たせる方を好む。遊女たちは着物の襟に匂いの入った小袋を差し込み、その匂いを楽しんだりする。そしてこの"匂い袋"は同時に、防虫剤としての機能も果たすようである。着物に薫き染められた匂いは、その個人を表す匂いとも捉えられており、暗闇の中でもこの匂いが個人を特定する手段となっているようである。私の遊女はその処方箋が10世紀まで遡るほどの古風な匂い袋を好んで使っている。彼女が説明するには、その時代における男女は御簾越しでしか会えず、言葉も交わせなかったため、着物に薫き染められた匂いで恋にも落ちたということだ。」

〜出島オランダ商館長〜

使用方法:

この袋を本のページの間に挟むなどして利用してください。

原材料名:

沈香、蘇合香、丁字、霍香、零陵香、鬱金、麝香

 

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